国土交通省が2024年6月に「住まいのエンディングノート」を公開しました。このエンディングノートは、人生を振り返りながら、自分の意思や所有物に関する情報を家族に伝えることを目的としています。
「住まいのエンディングノート」とは?
2024年6月、国土交通省は日本司法書士会連合会や全国空き家対策推進協議会と共同で「住まいのエンディングノート」を作成・公開しました。このノートは、PDF形式の16ページからなる冊子で、住まいに特化した内容が記載されています。
エンディングノートとは?
エンディングノートは、人生の終わりに向けて、自分の意思や財産、医療・介護に関する希望、相続や葬儀の意向などを整理し、家族に伝えるための重要なツールです。高齢化社会において、こうしたノートが注目される背景には、家族の負担軽減や自分らしい最期を迎えるための準備が求められているためです。
住まいのエンディングノートが公開された背景
国土交通省がこのノートを公開したのは、空き家問題の深刻化が背景にあります。2023年度の全国空き家率は13.8%と過去最高を更新しており、多くが相続された実家です。遺志や住まいの情報がうまく伝わらないと、家族はその処分に苦労します。そこで、住まいのエンディングノートは、家族が住まいの将来について話し合うきっかけとして作成されました。
住まいのエンディングノートの活用方法
このノートでは、次のような情報を記載することができます。
- 所有している不動産の詳細(所在、共有者、持ち分など)
- 住まいの処分に関する希望
- 借入金の状況
- 住まいに関するデジタルデータの管理
- 住まいにある貴重な家財の情報
- 家族へのメッセージ
一般的なエンディングノートと比べ、住まいに特化した内容が特徴で、家の売却時に役立つ控除や相続に関する情報も含まれています。これにより、家族が故人の希望を把握し、相続した家の売却や活用に対して適切な判断がしやすくなることが期待されます。
相続した家が空き家になってしまう主な理由
相続した家が空き家となる背景には、さまざまな要因が絡んでいます。以下はその代表的な理由です。
相続時の争い
相続は、元々仲の良かった家族間でも対立を引き起こすことがあります。相続人同士で利益や感情の対立が起これば、遺産分割協議がまとまらず、結果として実家が放置されてしまうことがあります。
さらに、兄弟姉妹で平等に共有することが決まった場合でも、売却のタイミングや方法に関して意見が合わず、空き家として残される可能性があります。共有不動産は、すべての共有者が売却に同意しなければ処分することができないためです。
公平に分割しても問題が生じることがあり、実家の相続は複雑で、解決に時間がかかることも多いです。
手続きの煩雑さ
相続や家の売却に伴う手続きの複雑さも、空き家問題を引き起こす一因となります。まず、相続した実家を売却するためには相続登記が必要です。特に、家の所有者がすでに故人やその前の世代になっている場合は、登記手続きがより複雑になることがあります。
また、家の売却方法もさまざまで、解体して売るか、リフォームをして売るか、買取業者に依頼するかといった選択肢について家族で話し合わなければなりません。
片付けが進まない
家を売却するにしても貸し出すにしても、必ず必要となるのが「片付け」です。単なる片付けと思われるかもしれませんが、これが理由で実家を放置してしまうケースも少なくありません。一軒まるごと片付けるのは、非常に手間のかかる作業です。体力的な負担が大きい上、故人との思い出の品々に触れることで、作業が滞ったり、感情的に苦しくなったりして、整理が進まないこともあります。
住まいの終活に必要な3つのこと
エンディングノートを記入することは終活の一部に過ぎません。住まいに関しては、以下の3つのステップも大切です。
家に関する書類を整理する
住まいに関する重要な書類は、わかりやすく整理しておくことが重要です。以下の書類をしっかりまとめておきましょう。
- 取得時の売買契約書
- 土地・建物の登記簿謄本
- 権利証書(権利書など)
- 建物の設計図や間取り図
- 住宅ローン契約書
- リフォーム工事の契約書
- 固定資産税の納税通知書
これらの書類は、相続や売却時に必要です。正確な価値を査定する際にも使われるため、家族がすぐにアクセスできる場所にまとめて保管しておきましょう。
権利関係の整理
共有不動産や借地、不動産の賃貸など、権利関係を整理しておくことも必要です。兄弟姉妹で共有している不動産の場合、共有者の意向を確認することが大切です。特に共有者が高齢の場合、相続で権利関係がさらに複雑になる恐れがあります。
借地権については、契約内容や地代の支払い状況、借地権の相続や譲渡の条件も確認し記録しておきましょう。また、賃貸物件についても、賃貸契約の内容、更新条件、敷金や保証金の取り扱いなどを整理しておく必要があります。
これらを文書にまとめておけば、相続時のトラブルを未然に防ぐことができ、不動産の管理や相続がスムーズに進みます。必要に応じて、専門家に相談して適切なアドバイスを受けましょう。
生前整理
生前整理も、住まいの終活の一環です。使わないものや重複している物は積極的に処分し、写真や記念品はデジタル化して保存スペースを工夫しましょう。貴重品や重要書類は、エンディングノートに保管場所を記載しておくことが大切です。
生前整理を行うことで、相続人の負担を軽減するだけでなく、自身の生活を整理する良い機会となります。物が減れば心も軽くなり、人生を前向きに楽しむことができるでしょう。生前整理は家族のためだけでなく、自分自身の生活を充実させるためにも役立ちます。
まとめ
国土交通省が発表した「住まいのエンディングノート」は、それを活用するだけで相続の問題が完全に回避できたり、実家が空き家になるのを確実に防げるというものではありません。しかし、このノートをきっかけに、家族で住まいの将来について話し合い、状況を理解し、生前整理を進めることができれば、余計なトラブルを回避し、実家が空き家になる事態を防ぐことが期待できます。住まいの生前整理に関してお悩みの方は、ぜひ片付け堂いわき店へお気軽にご相談ください。