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「行政代執行」とは、ゴミ屋敷への対応策としてどのようなものか?そのコストや詳細を解説します

ゴミ屋敷の増加は近頃の社会的な関心事として多くのメディアで取り上げられています。

この問題は、自分の家だけでなく、周りの家にも影響を及ぼすリスクが増しているため、単なる個人の問題とは言えません。

実際、ゴミ屋敷が引き起こす危険は日増しに増えており、その危機感から自治体が「行政代執行」として介入するケースも増えてきました。

今回、私たちはこの行政代執行というゴミ屋敷への対策や、その際の費用について詳しくお伝えします。

行政代執行は、ゴミ屋敷問題に対しての行政による強制的な介入の手段です。

この行政代執行は、行政代執行法の1条および2条に基づくもので、一定の管理義務を持つ者が地方自治体からの指示や勧告を繰り返し無視した場合、自治体はその義務を代わりに実行することが許されています。

そして、その際にかかった費用は、管理義務を果たさなかった者に後で請求されることとなります。

具体的にゴミ屋敷に対しては、自治体からのゴミ撤去の命令を守らなかった場合、自治体がそのゴミを代わりに撤去します。この際の費用は、後ほどゴミ屋敷の所有者に国税同様の手続きで求められることになります。

ゴミ屋敷が行政によって強制的に取り扱われるまでの手続き

ゴミ屋敷の問題が行政の介入を受けるまでの手順は、自治体により微妙に異なるものの、以下の11ステップが一般的です。

  1. 近隣住民から自治体へのゴミ屋敷の情報提供
  2. 自治体職員による現地の確認
  3. ゴミ屋敷の状態についての調査開始
  4. 自治体によるゴミ屋敷としての公式認定
  5. 職員によるゴミ屋敷の立ち入り
  6. 立ち入りによる詳細な調査の実施
  7. 調査結果に基づいた改善指導の判断
  8. 改善の指導を行う(書面または口頭)
  9. ゴミ屋敷に改善勧告をする
  10. 書面での改善命令の発行
  11. 改善が見られない場合の行政代執行の実施

この全過程は相当の時間を必要とします。

初めてのアクションは、近隣住民の苦情や情報提供から始まります。その情報が提供された後、自治体は現場を確認し、詳しい調査に移ります。

もしゴミ屋敷の問題が深刻であると判断されれば、専門の職員が立ち入り調査を行い、直接住民との対話を持ちます。大部分の自治体では、この段階での拒否は許されません。

適切な対応が取られなかったり、虚偽の情報を伝える行為は、罰則の対象となることもあります。

正式にゴミ屋敷と認定されれば、住民には改善指示が出されます。その後、状況の改善が確認されるまで、自治体はフォローアップを続けます。指導の段階は、勧告から命令へと段階的に進展し、最後の手段として行政代執行が行われることになります。

ゴミ屋敷の行政代執行には、かなりの期間が必要です。

前述した通り、11の手続きを経なければならず、その中で多数の審議が行われるため、時間がかかります。

指導の回数は自治体により異なりますが、ゴミ屋敷の住人に何年もかけて100回近くの指導や対話を行うことも珍しくありません。

実際に行政代執行が行われるまでには、近隣住民からの情報提供を基に、10年近くもの時間が経過することが多いのです。

ゴミ屋敷の強制処置までに長期間を要する背景

ゴミ屋敷は、近隣住民をも巻き込むトラブルや事故のリスクを抱えています。

迅速な対策が期待される状況なのに、なぜ時間がかかるのでしょうか。

事実、多くの審議や、何度もの慎重な指導が前提とされます。

このような多段階のプロセスを経ても、実際に強制措置に至らないことも珍しくないのです。

その背後には、ゴミ屋敷の問題が多岐にわたる複雑さを持っており、これが強制処置の進行を遅らせているのです。

以下、詳細を解説します。

理由1:所有物に対する権利問題

国民全員が安全な生活を保障される権利を持っているのは、多くの人々が知っていることです。また、ゴミも所有者の物として、権利が存在します。

民法第239条第1項には、所有物に関して次のように規定されています。

道路に放置されている物や落ちている物には、所有権は存在しない これを考慮すると、ゴミ屋敷の中にあるゴミも、その住人が所有する物としてみなすことができます。

たとえそれが危険や不衛生に見え、安全に保管できる量を超えていても、その所有権はゴミ屋敷の住人に存在します。

「これは私の大切な物で、ゴミではない」と住人が言うなら、自治体はその権利を無視してはいけません。

例として、配偶者の死後、高齢となった者がゴミ屋敷化するケースも考えられます。だが、その土地や家は私有です。

住人の許可なく、自治体が勝手に立ち入ることはできません。それは住居侵入罪になる可能性があります。

ゴミ屋敷の住人との対話が難しい場合でも、自治体ができるアクションは限られており、危険性を訴え、理解を得る努力を続けることとなります。

住宅内のゴミを「所有物」としてみると、その所有者であるゴミ屋敷の住人の意向に反してその物を処分するには、法的根拠を明確に持たなければならないのです。

そのため、自治体は市民の権利を尊重しつつ、状況の改善を促すために繰り返し審議や指導を行うのです。

理由2:ゴミ屋敷住人のメンタルケア

ゴミ屋敷の問題は、表面的なものだけでなく、深く複雑な背景が存在します。

強制代執行によってゴミを一時的に取り除いても、再び同じ状態に戻るケースが多くあります。

その理由として、単にゴミ屋敷の状態を改善するだけでは、住人の持つ核心的な問題や困難は解消されないからです。

多くのゴミ屋敷の住人は、うつ病、認知症、セルフネグレクトなどの心の健康上の問題を持つことが知られています。

ゴミ屋敷の状態を本質的に改善するためには、住人の心のケアや、医療や福祉のサポートが欠かせません。

また、自治体による指導や勧告を十分に理解できない住人へのアプローチも、ゴミの問題を改善する上で必要とされています。

ゴミ屋敷の問題の中心には、単にゴミを撤去するだけでは解決しきれない、深刻な課題を持つ住人が存在することを認識することが重要です。

理由3:ゴミ屋敷への介入に伴う高額な経費

ゴミ屋敷の清掃や整理には相当な経費が必要です。

行政代執行を実施する場面で、部屋の大きさやゴミの量に応じて、数百万円の出費が予想されることもあります。

こうした経費は初めに公的資金で支払われ、後でゴミ屋敷の住人へ請求されます。しかし、大きな金額を使うには自治体内での審査や承認が必要となり、これに時間がかかることも少なくありません。

また、個人が自ら清掃業者を選べるのに対し、行政代執行における清掃業者やコストは、あらかじめ指定されていることが多いです。

そして、行政代執行で生じた経費は、完了後にゴミ屋敷の住人に返済を求められます。支払いが滞ると、国税の未納と同様の手続きで強制的に取り立てられることも考えられます。

しかし、多くのゴミ屋敷の住人は高齢であったり、健康や経済的な問題を抱えており、大きな額を支払うことは難しい状況です。

清掃の経費を支払えない場合、住居の売却や福祉サポートが必要となることもあるでしょう。

経費の回収が難しいため、公費での前払いを承認するプロセスは厳しくなる傾向があります。

この経済的な側面が、行政代執行を実行するハードルを高くしている要因の一つと言えます。

日本初のゴミ屋敷に対する行政代執行のケース(京都府右京区)

日本における最初のゴミ屋敷に対する行政代執行は、平成27年11月に京都市右京区で行われました。

対象となったのは、木造二階建てのアパートの一部と、その入口近くの私有地上にたまった主に古紙のゴミでした。

50代の男性住人は、自宅の中だけでなく、入口の私道や公共の道路にもゴミを置いており、平成21年から近隣の住民が市に対してこの問題を訴えていました。

公道に置かれたゴミは平成24年に取り除かれましたが、私有地のゴミはそのままで、市からは120回以上の注意や指導が行われていました。

男性は一時的にゴミの片付けを始めましたが、継続的に新しいゴミを持ち込んでいたため、実際にはゴミの量は増加していました。

行政代執行が実施された際、私道には約2メートルの高さ、0.9メートルの幅、4.4メートルの長さのゴミが積み上げられていて、1.3メートル幅の道路をほぼ塞ぎ止めるほどでした。

自治体が初めての指導から実際にゴミを撤去するまでには、約6年が経過していました。

まとめ

多くの自治体がゴミ屋敷問題の行政代執行を条例で取り決めてきたことから、実際に介入されるゴミ屋敷も増加してきました。

だが、ゴミ屋敷の問題は非常に複雑で、その解消には時間と多くの手間がかかるものです。

極度のゴミ屋敷となると、周りの住民との間に摩擦が生じることが避けられず、行政の介入により大きな負債を抱えるケースも増えてきました。その結果、家族や親戚も巻き込む大きな問題となることが珍しくありません。

多くのゴミ屋敷の背景には、老化や精神的な問題が関わっていると言われています。

特に独り暮らしの高齢者は、ゴミ屋敷化になるリスクが高く、パートナーを失った際の持ち物の整理など、心が沈む瞬間に特に注意が必要です。

もし実家などでゴミ屋敷の初期段階を見つけた場合、専門の不用品回収業者と連携して早期の対応を考えることが推奨されます。

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